「ツァンダオか…手強いな…もしかしたらやられちまうかもな」


 走りながら、エイジは呟く。


「俺は負けねェよ」

「…生きてたか」


 不意に前から聞こえてきた声に、エイジは心底残念そうに言った。


「テメェこそなに寝ぼけてたんだよ。記憶喪失ってガラじゃねェだろ」

「神経が繊細なんだよ、どっかの刀バカと違ってな」

「んだとコラ」

「…先、行くわ」


 ミサトは構わずに、走り出す。

 レンとエイジも慌ててそれに続いた。

 その時大きな爆発音が聞こえて、ビル全体が大きく揺れる。

 頭上から天井がぱらぱらと崩れ落ち、3人は思わず立ち止まる。


「このビルごとぶっ壊す気かよ」


 頭を抱えながら、エイジは言った。

 どっちにしろ、西側の最上階に近付けば近付くほど、銃撃戦の音は激しさを増してくる。


「レン、その傷…」

「かすり傷だ」


 階段を登りながら、レンは言った。

 だがその言葉が当てはまらないほど、体中のあちこちに 傷を負っていた。

 5階まで上がると、そこはさながら戦場のようだった。

 組織の者同士が、廊下で激しい打ち合いをしている。