「タクシーで来ればよかったんじゃ…ここの住所は知っとったんじゃろ?」
「来たわよっ!!」
ドン、とカウンターを叩きつけて、ミサトは怒鳴る。
その全体が、大きく揺れた。
「ちゃんとメモ見せて、お金まで渡して! そしたらあんな遠くで降ろされちゃって…あぁっ、全部あのタクシーが悪いのよ!! 今度見つけたら、タダじゃおかないからねっ !!」
どんどん、と連続でカウンターを叩きつけるミサトの席から2席空けて座っていた男は、グラスに入った酒がこぼ れないように、それを持ち上げる。
「あたしがどんな目に遭ったと思ってるのよ!? ワケのわからん連中に絡まれること6回、肉弾戦4回、銃を使ったのは2回っ! ついでに言うとナンパが3回。そこまで言やわかるでしょ、このジジイ!!」
「最近タクシーも、こんなダウンタウンの奥まで入ってくるのを嫌がるからなァ…そんなことだろうと思っとったわ」
「分かってたのかい!!」
どん、とひたすら大きく、カウンターが揺れた。
その時。
隣に座っていた男が、すっと動く。

