自分のオフィスに戻ったユイは内線で部下にいくつか指 示を出し、受話器置くと、椅子の背もたれに深く寄りかかる。

 そして額に手を当てて、じっと考え込むように天井を見つめた。

 …もっと、注意を払っていれば。

 みすみす、ロンの思い通りにはさせなかった。

 まだまだ、自分の力が足りないのだ。


「……っ…」


 肩が、震える。

 手に覆われたその頬から、一筋の涙が流れる。

 その時、部屋のドアがノックされた。


「お呼びで?」


 ドアの前には、茶髪の男が立っている。

 ユイは涙を拭いた。

 男は訝しげに、それを見つめる。