「泣くなよ」

「泣いてないわよ」


 ミサトはレンを見上げる。

 そしてふと、あることに気付く。


「ちょっと待って。ゃ、組織はサエイジの記憶が戻るのを気長に待ってるって言うの?」

「いや。俺が昨日、何の為にあのカジノに行ったと思ってるんだ?」


 そこまで言われて、ミサトははっとする。


「ま…まさか」

「そのまさか、だ」


 レンは、自分の頭を指差して笑う。

 そのディスクのアクセスコードは、レンも知っているのだ。

 もしくは、知っていると嘘をついて、交渉するため。

 そして昨日カジノに行ったのは、そのことを組織と取引するため。

 取引内容は、アクセスコードとエイジの命。