レンはやっと、ミサトを掴んでいた手を離す。

 ミサトは、そのままぺたりと床に座り込んだ。


「だがな、そのディスクのアクセスコードを、あいつが勝手に変えたんだよ」

「エイジが?」

「あァ。何か予感がしたのかも知れねェ…だが記憶が無くなってしまった以上、ああやって組織はエイジを生かしておくしかねェんだよ。ま、あいつの戦闘能力は高いし、うまく騙せば組織にとっても使えると思ったんだろ」


 それに、とレンは続ける。


「あっちには、ユイもいるしな」

「そこで何で、あの女の名前が出てくるの?」

「ユイは組織の幹部だ」


 そう言うレンの口調は、どこか沈んだ雰囲気が漂っている。


「そのおかげで、あいつは今も生きている…って言っても過言じゃねェよ」

「ユイがエイジを…かばって…?」


 そういうことになるな、とレンは言う。

 赤くなった手首をさするようにして、ミサトは俯いた。

 ユイがエイジを、庇って。

 そのフレーズが、やけに心に突き刺さる。