「あんただっていなかったじゃない!! ブラックジャックだったのよ、あたしはっ!!」
「…何じゃそりゃ」
「何やってんのよ、なんでわざわざ騒ぎを起こすワケ?」
「交渉決裂の結果だ」
あぁもう、と、できることなら頭を掻き毟りたいのを必死でこらえて、ミサトは内腿に縛り付けてあった銃を手に持った。
「あんたに駆け引きの才能があるとは思えないけどね、レン」
物陰から銃で応戦しながら、ミサトは言った。
いやまったくだ、とレンは変なところで納得している。
「とにかく逃げるぞ。何だまだ持ってたのか、それ?」
レンはケースに目を落として、ミサトの顔を見る。
「だって大金なのよ?」
「捨てちまえ、そんなモン」
「え? だって…」
「ニセモノだ」
「あ~もう、ムカつくっ!!」
腹いせに、ミサトは敵のほうに向かってアタッシュケースを思い切り放り投げた。

