BRACK☆JACK~本章~



「どうすんのこれ…」


 ブラックジャックのルールくらいは知っていたが、本格的な賭け事はやったことがない。

 呆然としていると、ディーラーの女が、ミサトの方にコインを一枚、投げてよこす。


「ここは現金は賭けられないわよ。そのコイン、使って?」

「あ、はい…って、あんた日本語喋れるんじゃない」


 始めからそう言ってよ、とふてくされながらも、ミサトはカードを一枚めくった。

 周りから、小さくどよめきが起きる。

 一枚目は、スペードのエースだった。

 女はじっと、ミサトを見つめている。

 ミサトは恐る恐る二枚目のカードに手を伸ばす。

 誰にも見られないように、そっとカードの端っこだけを持ち上げて、覗き込んで。

 その時、突然ビップルームのガラスが、大きな音を立てて砕け散った。


「え?」


 まさかとは思うが。

 ざわめく客を無視して、ミサトはケースを持つと、音のした方に向き直る。