「こっちの世界じゃ有名な男じゃよ」

「悪名だけどな」


 レンはそう言って笑う。


「そうなの? 全然知らないし」


 大して興味なさそうに、頭の後ろに手を組みながらミサトは言った。

 完璧なまでに壊された店の中。

 どうすんのよこれ、とミサトはため息をつく。

 その時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「お前さんたちはここにいないほうがいいな。レン、あんたこいつを連れて行ってくれないか?」

「「えぇっ!?」」


 老人の申し出に、またレンとミサトの声が重なる。


「さっき見たとおり、ミサトは銃の名手だ。きっとお前さんの役に立つじゃろ。そしてミサト、この男はお前の捜しているモノを、知っている」


 ミサトは、黙り込む。

 普段はとぼけているが、この老人は何でも知っている。

 その言葉はいつも真実を語っているということを、ミサトは十分解っていた。