「ミサト…君は何故そこまでする?」


 屋上の奥で、ロンは何人かの部下を従えて立っていた。


「あの時てっきり始末したものだと思って、油断していたが…あのまま地下深くで大人しく暮らしていれば、長生き出来たものを」

「………」

「私が、お前は生きているという情報を裏の世界に流せばどうなるか、ミサト、お前が一番よく知っているだろう?」


 ミサトは無言のまま、ロンを睨み付けている。


「あの時と同じく、生死の境を彷徨いたいか?」

「………」

「私のように、常にあらゆる状況を想定して動かなければ、この世界では死を招く」

「…違う。ディスクが無くなった今、あたし達を相手に勝てる自信が無くなった…だから逃げるのよ。そうでしょ」

「何とでも言え。今はこれがベストな選択だと思っている…。ミサト、裏ルートは、まだこれから手に入れればいい。だが今は、お前のような死神から身を守るのが先決だ」


 ビルの向こうから、ヘリコプターのエンジン音がする。


「一つ、言うけど」


 ミサトは、銃をロンに向けた。