「おい大丈夫か?
今…引き上げるからな!」
穴の出口に数名の同じいでたちをした者達が垂らされた綱を頼りに上ってきた自分に手を伸ばし数名で引き上げた。
着慣れぬ衣服に足を取られ綱を頼りに上るのに手間取っていたのだが…数人の者達の助けもありようやく地上の土を踏んだ。
焼ける木材の臭いを風がまきあげて火は沈下しているものの…白い噴煙が辺りの視界を悪くしていた。
「大丈夫か?」
銀のいでたちをした仲間が…殿を気遣い声をかけた者を睨みつけたが…その者は驚いた表情を覗かせたもののなおも体を支えて献身的な姿勢を見せた。
「かたじけない…!
まだ…中に人がいる筈だ!」
無償で救助に当たってくれたこの者達に敵意なしと悟った自分は…下に残してきた濃達の救助を頼んだ。
「わかった…!」
殿の言葉を聞きまた穴に戻り他の者と救助にあたっている様子を見送った殿は“まだまだこの世も捨てた者ではないな…”と噛み締めて赤い物体の前に控えていた同じいでたちの者にまた声をかけられた。
「大変だったな。
ようやったな!
救急車で手当てしてもらうとええわ‥。」

