両者の激しい睨み合いに圧倒された周囲も沈黙を守り固唾をのんで見守るなか…殿は颯爽と私の前へと歩みよった。
「殿……………。」
そのまま私の体を抱き寄せた殿に私は驚き声をあげた。
「わしは…そなたの近くにいる…。
もう…どこにもいくな…。
わしの近くにいよ!!」
抱き寄せられた体に力をこめられ耳元で囁いた。
「ごめんなさい…。」
今度は…私が殿を抱き寄せた。
殿はそのままゆっくり私を抱えこみながらステージの上からおらした。
「また…失ったかと思った…。
あんな想いは二度としたくない………。」
そのまま床に下ろした私を再びキツく抱きしめた殿の内なる不安が腕から伝わり私の心に響いてきた。
「殿………………。」
私も殿の体をキツく抱きしめる…。
「何も言わなくてよい…。
すまぬ…。
非力なわしを赦せ…。」
言いかけた言葉を遮り殿は私に謝った。

