ガラシャさんは…窓から差し込む光を遮光カーテンをひいて声を潜め話を続けた。
「私の身を案じたマリアは、私ごと彼女の実家に身を寄せてくれないものかと…実家に頼んでくれたみたいなのですが…その時…私の父…光秀が朝廷より殿が献上する筈だった暦を密かに持ち出すよういわれていたようですが…羽柴氏の中国大返しの件もあってなぜか暦を渡さないままになっていたようなのです。
恐らく…本能寺の変の後…朝廷側が父に全ての罪を押しつけようという動きを悟ったからなのだと思います。
そこで…マリアに私に暦の事を知らぬか聞くように話たのかもしりませぬが…父とは会えぬまま私は落ち延び父はそのまま還らぬ人になりました。
それに…父は私達家族や家臣にすら勤め先での事など話した事もないので…例えあの後…父と落ち合えたとしても教えてはくれなかったと思います。
心の内を話す人ではなかったので…。
ですからマリアは私は…行方がわからない事にして…実家であった公家には帰らず長く仕えてくれたのです…。
私はその時…俗世を捨てよという御言葉なんだと思い…キリシタンの洗礼を受けガラシャと洗礼名を賜り主の教えを守り生きる事につとめたのです。」

