「母親になったからかなあ…。
まさか吉乃様の小言が聞けるなんてね!!」
ヘヘヘ…と屈託のない笑みを浮かべた諷馬は…手ぬぐいで顔を拭きながら茶化した様子に…何も彼が変わっていない事を思い知らされ安息をついた。
「肴!!
遊んでよ…!」
共に連れて帰ってきた…弥平次さまの忘れ形見の我が子は…すっかり肴に慣れ彼の声を聞きつけて走り寄ってきた。
「じゃあ…!
肴の体を拭いてよ!」
二人に手ぬぐいを渡した彼は我が子と戯れる様子を穏やかに眺める光景が差し込む光とともに薄れていった。
チチチチ…。
クシャッ…ポンッ…。
鳥の囀りと無造作に投げられた音に私は目を覚ました。
寝ぼけ眼で起き上がる私の目の前にクシャクシャと丸められた用紙がいたる床に散らばる部屋を目を擦りつつ辺りを見回した先に隣で寝ていた殿が部屋の脇の小机に座り筆ペンで何やら書きなぐっている様子が目に飛び込んできた。
「殿…!
どうなされたんですか?」
散らばる紙を手にとりつつ尋ねた私に気づき殿は声をあげた。
「吉乃!
目が覚めたか?」
覚めたというよりは…起こされたといった感じだけど…机に向かう殿の近くにそれとなく歩みよりながら何気に筆の先に書かれた用紙を覗きこむ。

