あまりにも真剣な表情に一点のくもりもない瞳で託されたら、さすがに嫌とは云えず頷いた。
「承知いたしまする。
どうか…ご武運を…。」
言葉に願いを込めて夫の無事を祈り送り出したが…彼が再び屋敷に戻る事はなく…私は兄上と共に生駒の屋敷にかえってきた。
懐かしい稲穂の道に私を送り出してくれた時と同じく…諷馬が待っていた。
「お帰りなさい…。
吉乃様…。」
大人になったのか迎えにきてくれた諷馬は…もう類とは呼んでくれなかったけど、昔と変わらない笑みで迎えいれてくれたのに思わず笑顔を浮かべ細めたその瞳から一筋の涙がこぼれた。
「―――ただいま…。」
諷馬は私の涙をみて…指で拭った。
その日から…再び生駒での忙しくも穏やかな1日に戻った…。
「…吉乃様…!」
全身泥だらけで現れた諷馬は…この頃では肴〈サカナ〉という源氏名で親しまれていた。
「ちょっ…どうしたのその格好―――!」

