困惑気味の若に向かって差し出された手をしっかり握りしめた。
「またお越し下さいませ…。」
「うむ…。」
俯き訝しげに若は…夫の前にまたがり屋敷を去っていった…。
この後…。
様々な内乱が起こり…若が屋敷に訪れる事は二度とないまま…やがて、夫はあの長山城の合戦を迎えた。
合戦の鎧兜に身を納めた彼の支度を済ませた私に彼は…短刀を渡した。
「私の形見だと思い…。
何かもし自分にあれば…信長様をお守りするよう八右衛門殿に伝えてくれぬか…。」
「こんな時にも…信長様でございますか?
あなた様は…本当に信長様の事を信じておいでですね…。」
私の言葉にいつになく真剣な表情で…短刀を無理矢理私に握らせた。
「あの方は…戦に身を投じるとまさに神の如き…才を発揮なさるが…いずれそれが大きな災いとなるやもしれない…。
その時は…そなたや八右衛門殿が信長様の災いを和らげてもらいたい…。
いつか…あの方は尾張をもしかしたら…日の本を背負われるやも知れぬそんなお人ゆえ…お守り下さるよう八右衛門殿にお頼み申すと伝えてほしい…。」

