「…私でお役にたてるならなんなりとお申し付け下さいまし…。」
夫の言葉に従順に頷き答えた私だったが…弥平次様はある時まだ幼い若様を連れ立って屋敷に帰ってきた。
「…吉乃…。
こちらが若様だ…。
若様…。
私の妻…吉乃でございます…。」
だんなの影に隠れて厳しい目つきで私を警戒していた小さな若を私は健気に感じました。
「城を出ようとしていたところお見かけしてこちらにお連れした…。
何分にも夜分遅いため明日明け方こっそり城に連れ戻るゆえ今宵はここに寝床を整えてほしい…。」
相変わらず…夫の背後からジッと私を睨みつけられた若ににこりと笑みを浮かべたが若は…ツンとしてそっぽを向いてしまった。
私は寝床の用意をしている間…視線を背後から感じ振り向いた先に若が扉の影から様子を窺っていた。
「どうぞ…。
こちらへ…。」
警戒しながら…部屋に入ってきた若は私の前にたどり着くとジッと私を見つめそして用意した枕を蹴飛ばした。
突然の事にさすがに面食らったが…何分にも子供のする事…困らせて気を引こうとしている様子を悟った。

