『武士ドルが斬る!?』〈前編〉



 諷馬の気持ちには…気付いていた…。


 気付いていたけど…まるで兄弟のように育った私と諷馬の関係に…今更恋沙汰などこの時近すぎて思えなかったのだ…。


 それに…私が望まなくてもきっと諷馬は私を連れて生駒家を出る覚悟を決めていた事もあり…彼に生駒家を裏切らせてはいけないという思いが先行し…私はこの日以降…諷馬と会わぬまま土田弥平次様に嫁いだ…。



 土田様に嫁ぐ日…。
 例のあの稲穂のあぜ道の遠くに…見送る諷馬の姿を見つけ私は密かに別れの手を振った。




 そんな…。


 私を向かい入れてくれた土田弥平次様は…よく織田のご子息の吉法師さまのお話をして下さった。



 吉法師さまは…弥平次様の身内にあたる土田御前様のご嫡男だ…。



 やや子〈赤子〉の時から‥気性が荒く何人もの乳母の乳首を噛み切っただのイロイロな噂は‥生駒の屋敷で育っていた時から聞いてはいたものの‥弥平次様はとても聡明なお子だとお褒めになっていた。




 「…御台様(土田御前の事)の事を悪くいうつもりはないが…長く母と離れて暮らしていた事もあり…御台様も吉法師さまを受け入れられぬとこがある…。


 吉乃…。

 もし若様に出会う事があれば…若様の話し相手として接してはもらえぬか?」