感じのよい柔らかな笑みを浮かべて…湯漬けを断ったその人物が…私の最初の夫…土田弥平次様だ…。
「そんな事を言わず…。
古きは…同じ一族ではありませぬか…。
それに…。」
不自然にチラ見した兄上は…言葉を濁らせ咳払いした。
こんな時は…大抵早く動けと催促されているのを感じとり私は丁寧に一礼して立ち上がりソソソ…と奥の台所に進み湯漬けを手早く用意して運んだ…。
「大した物は…ございませぬが…。」
「これは…忝い…。
有り難く頂戴つかまつる…。」
弥平次様は…私の用意した湯漬けの椀を顔から離さず一気に平らげられ膳の上に置かれて手を合わせた。
「…おいしゅうございました…。」
一気にかき込まれた弥平次様の様子に何だか不自然さを感じつつ私は尋ねた。
「もう一杯いかがですか?」
「いいえ…!
今宵は本当にこの後…那古屋城に参りますゆえ…本当にお気持ちだけで…。」
先程の落ち着いた表情になんだか頬を赤らめた弥平次様は…私を避けるように湯漬けを断りやがていそいそとこの日は帰宅した。
「弥平次様…。
よほどお急ぎの用でしたのね…。
そんな方をお止めするなんて…兄上らしくもない…!」
弥平次様を見送った後…膳を片付けつつ兄上に尋ねた。

