「吉乃…!」
7つをすぎた頃より私は…吉乃と呼ばれるようになっていた。
それなのに…。
「類さま…!
八右衛門様が探してたよ!」
私を探しにきた成長した諷馬は…もう10を超えたというのに…未だに“類”と呼んでいた。
「‥まあ‥。
なんでしょう‥!
はーい!
今‥参ります‥!」
諷馬に呼ばれて兄上の呼ぶ声に声を張り上げて生駒の屋敷に上がり込んだ私の前に‥旅姿のお客人の姿に気づき私は慌てて…髪を整え床に頭をついた。
「お客人とは…つゆ知らずご無礼をお許し下さいまし…。」
真っ赤な顔で私は…お転婆ぶりをご披露してしまった事を深く詫びたその様子に…客人はにこりと感じのよい笑みを浮かべた。
「まったく…!
吉乃…!
どこにおったのじゃ…!
すまぬが湯漬けを用意してくれぬか…!」
兄上が私の声に気づき屋敷の中に入ってくるなり用事をいいつけてきたので私は会釈して立ち上がった。
「いいや…!
八右衛門殿…!
よいのじゃ…!
もうお暇するが故…そのお気持ちだけ有り難く頂戴つかまつる。」

