「…乃…。
吉乃さま…。
…類〈ルイ〉さま…。」
気がつくと私は金色に光る稲穂のあぜ道にいた…。
風に稲穂が揺られる中…少年の声が近づいてくる。
「…類さまぁ…。」
「…諷馬…。」
声の方向に振り返った方向に‥大きく手をふりながら近づいてきた少年は駆け寄るなり私を抱き寄せた。
「お一人でまたお使いなんてお声をかけて下さいよ!」
彼の名は‥諷馬‥。
‥諷馬の母は‥彼を生駒の屋敷で生み落とし亡くなった‥。
その後‥旅先のやや(子供の事)のいない商いどころにもらわれて以来‥生駒の屋敷に出入りしていて私の事を唯一‥“類(ルイ)と呼ぶ幼なじみの1人だ。
「心配症ね‥!
大丈夫よー!
その先の咲五郎〈サクゴロウ〉様のとこに持っていくだけですもの‥1人でも大丈夫‥。」
「それでも‥お供します~。」
何故か‥諷馬はいつも私の後をついてきたがった‥。
生駒家に恩があったからというのもあったからかもしれないけど‥私を追いかけて稲穂の揺れるあぜ道中を2人おしゃべりしながら並んで歩くのが日常茶飯事になっていた――成長したある日―――。

