「ああ…。
 これ…!!」


 ポケットの中から取り出した物を私の右手に乗せて更に言葉を続けた。


 「気を失う前にずっと握りしめてたみたいで…しばらく気を失っていた時…硬直してたから気がつかなくてね…。
 この病院に転院してきて…処置してもらって緩んだ右手から出てきたみたいって言ってたから預かってたんだ…。」



 「御守り…?」



 パパの説明に私は渡された手の中の御守りを見つめた。



 御守りには…“本能寺”の名前が刺繍で刻まれている。



 「本能寺かあ‥。」



 気絶する前‥ベンチの下で見つけてとっさに拾ってそのまま願掛けする間もなく気を失った情景が‥脳裏に蘇ってきた。


 「一応‥権田教授や‥諷馬から一部始終聞いたよ‥。

 まあ正直‥親としては複雑だったけどね‥。

 一応…大学の方は様態を見てから通えるように手配してくれるみたいだから‥何も心配しないで今はゆっくり休養しなさい。」



 パパとしては‥京都での話を聞いて複雑な気持ちであろうに‥敢えて冷静に対応してくれるのが‥パパの優しさだって知っているから‥今回は余計申し訳なく思い私はパパに年甲斐もなく抱きついた。