400年前…。
 隣で何度も眺めた吉乃の寝顔と重なり胸が詰まった。



 会いたくて…。
 会いたくて…。


 何度探した事だろう…。


 もう一度出会ったら言いたい事が山ほどある。


 文句も…。
 相談も…。


 全て受け入れてくれた吉乃。


 暗殺と裏切りの中で心を支えてくれた吉乃にどうしても会いたかった。

 会って伝えなきゃいけないと思った。


 例え…。
 南蛮の伝道師達が恐れる「魔王の書」の力を使っても…。

 唇を噛み締めガラス越しに400年ぶりの想いを込めて娘の寝顔を見つめた。


 しかしその横で眠る弟が殿の気配に気付き目を覚ました様子に慌てて身を潜めた。


 不審な気配を感じ身を起こした男は扉を開けて出てくると、周囲を見回しながら四輪の荷車を旋回した。


 その様子に足音をたてずに身を潜めながら…四輪の荷車の周りを一周した。


 辺りを見回しながら弟は後方の扉をを開けて布のような物を取り出し始めた。