「今回の旅行はハネムーンだし、彼女もテニスの部活があるから、主人の実家に預けてきちゃった。
悪いと思ったけど、やっぱり正解だったわ。」


うふっと肩をすくめ、ユリは笑った。

さっきプールで見たユリのビキニスタイルの腹部は、綺麗に真っ平らで、とても子供を生んだとは信じられなかった。



「ユリさんの娘さんなら、さぞかし綺麗なんでしょう?いいなあ。」


「全然。あの子、前の主人に似ちゃったの。
太ってるし、ジャイ子みたいなのよ。」



ジャイ子、と言うユリの言葉に琴美は思わず吹き出し、食べていたスコーンのかけらをユリの方へ飛ばしてしまった。


「娘がいるでしょう。
広くもない家だから、なかなか思い切り、出来なくて。
だから、あの人、すごく張り切っちゃってるの。もう45なのに。」


ユリは笑いながら、テーブルを紙ナプキンで拭き、琴美を上目遣いに見た。

この意味、わかるでしょ?というように。



ふと、琴美は透との夫婦生活の悩みをユリを打ち明けたくなった。



高二の夏、ユリに一重まぶたの悩みを打ち明けた時、彼女は琴美に合うアイメイクを教えてくれた。


それは実践的でとても効果があり、少し大袈裟にいえば、琴美の人生をいい方に変えてくれた。


どんな悩みでも、ユリなら、いいアドバイスをくれる気がした。



「…そうなの。教師って大変ね。
私の知ってる川嶋先輩は、いつも元気って感じの人だから、胸が痛くなっちゃう…」


琴美の話をきくと、ユリは美しい眉をひそめた。


もちろん、降矢と不倫してしまったことは言わなかった。


今回の旅行でセクシーランジェリーを用意していることも。
恥ずかしくて言えなかった。


どちらもあけすけなユリなら軽蔑せず、きいてくれそうだけれど、今は唐突過ぎる、と思った。