「ユリ、あいつらすげー喜んでたよ。
いろいろありがとうな。」
透はユリの耳元で囁くように言った。
ユリはくすり、と、笑った。
「私もすっごい楽しかったよ。
皆、すっごく可愛いし。
出来れば、ヌードになりたかったな。」
透の両手は、不埒にもユリの小振りの乳房に添えられる。
「やめてくれよ…俺、教師クビになっちゃうじゃん…」
ユリの首筋に舌を這わせながら、透は言った。
「それに、ユリの裸、誰にも見せたくないよ…旦那は仕方ないとしても。」
川嶋透とは、大学時代、同じスキー部だった。
大学進学の為、十八歳で宮崎から上京した。
田舎娘だったユリにいち早く目をつけたのが、スキー部に勧誘した二つ歳上の川嶋透だった。
南国育ちのユリは、スキーなどやったことはなく、勧誘されるまま、スキー部に入った。
暗闇のベッドの中で、ユリは気怠く言う。
「明後日、あの人、タイから戻るの。今度は、一ヶ月くらい日本にいるって。だから、当分逢えないな。」
「マジかよ?一ヶ月以上も逢えないのかよ?気が狂いそう。」
透は手を額に当てて、顔を顰め、大袈裟に嘆く。
三年生だった透は、新入生のユリに一目惚れをして、熱心にアプローチしたが、当時は叶わなかった。
既にユリには、水野和馬という半同棲中のステディな恋人がいたからだ。
付き合うようになったのは、半年前からだ。
スキー部のOB会の誘いで、幹事の一人だった透がユリに連絡したのがきっかけだった。
ユリの方から誘った。
ユリは、大手化粧品メーカーに勤務する夫・和馬の赴任先のタイから、一人で戻ってきたばかりだった。
透にしてみたら、こんなに夢のような話はない。
人妻だろうと、なんだろうと彼女は透にとって、夢のような憧れの存在だ。
話は早かった。
ユリはOB会など、卒業してから、一度も参加したことがなかった。
スキー部に入ったのは、雪を見たことがなかったからだ。
白銀の世界に憧れていた。
いざ、その世界に足を踏み入れて見たら、
『寒過ぎて嫌になっちゃった…』
夜のバーでそう言って、恋人の水野和馬を苦笑させた。
和馬は、ユリが初めて付き合った大人の男だった。