あなたは私の王子様。―Princess Juliet―


きらり、と胸元で一瞬
アメジストの指輪が強く輝いたような気がして
視線をおとす。
その仕草を不審に思ったのかラーズも
同じように視線をあわせた。

「お、なんだ?いい指輪じゃねーか。」

「っ…だめ!触らないで!」

ジルの胸元に下がっていた
ベルティエ伯爵家の跡取りの証――
アメジストの指輪がかかったネックレスを
引きちぎったラーズは
検分するかのように太陽にそれを翳した。

「へぇ?
年代もんの良いアメジストじゃねぇか。
高く売れそうだな。」

「お願いっ返してちょうだい…!」

もがいて取り返そうと飛び上がるが、
ジルの両手はラーズに捕まれており
強く身を捩ることが出来ない。
頭一個分背が高いラーズは
更に高く指輪を掲げた。

しびれを切らしたジルは、先程よりも
勢いをつけて地面を蹴った。
その時、不意に拘束が緩くなり
チャンスを獲たジルは指輪に手を伸ばした。

が、がりっという音とともに
ラーズの頬にジルの爪が引っ掛かり、
ラーズが思いきり顔をしかめた。
やばい、とジルは青ざめた。

「おい、お嬢ちゃん。
オマエ、こっちが手加減してりゃあ
いい気になりやがって…」

「わ、わざとじゃな…」

パァン!という激しい音とともに
床へ倒れたジルは涙目でラーズを睨みあげる。

「なにするのよっ」

「調子のんなよ?そら、お返しだ。
よーく見てろよ。」

にや、といやらしく笑ったラーズは
アメジストの指輪を思いきり高く振り上げた。

それだけでジルは何が起こるのかが
わかってしまった。