あなたは私の王子様。―Princess Juliet―


イェルディ王立騎士団と言えば
最強の騎士達が集う部隊だ。
団長にハインツ王太子殿下が就任して以来
大陸最強の名をほしいままにしている。

「ちっ!そりゃ面倒だな…。
おい、てめえら。得物持ってこい!
どちみち品出しは終わったんだ。
キズを負ってでも、大陸へ帰らねえと
帝国御用達商人[シャニス]の名を
貰えないぜ!稼げなくなっちまう!
騎士どもを追い返せ!」

雄叫びをあげた男達は、
散り散りに持ち場へ消えていく。
まるで一昔前の海賊のような男達だ。と
ジルは思った。

「さて、お嬢ちゃん。
アンタには人質になってもらうぜ?」

「人質?!なによ、それ」

「交渉の為にだよ。
ま、どちみちアンタは俺達が買ったんだ。
手放すわけにはいかねぇ。
おい、ヒルゼッド!俺の得物持ってこい。」

おう、と頷いたヒルゼッドという男は
先程までジルが居た部屋に駆けていった。
ジルは慎重にラーズを見上げた。

「あーあ。ほんとアイツとつるむように
なってから商売あがったりだぜ。
あの女の時は査定を潜り抜けたが
今回はわからねぇな…さすがに。
もし万が一見つかってもそいつら殺せば
良いや。」

あの女―――ということは
以前にも居たというのだろうか。
ジルと同じような目にあった女性が。