ジルは涙をこらえて
武器になりそうな物を探す。
(早く逃げなきゃ…!)
「てんめぇ…」
後頭部をさするラーズは
ゆらり、と立ち上がるなりジルを
怒りの形相で睨み付ける。
「な…なによ!
捕まえられるもんなら捕まえてみなさいっ」
ますます挑発してどーすんのよ!と
思ったが後悔してももう遅い。
ドレスの裾を翻して、開け放った扉から
一目散に駆け出す。
その時――――。
「お、お頭はどこだ?!」
ガラの悪そうな大男が甲板を
大声をあげて駆けずり回っている。
「おい、やべぇよ!
お頭はどこか知らねえか?!」
「バカ!船長と呼べ!
船長ならあの買った女とお楽しみ中――」
「あっ!あの女じゃねぇか…?!」
指をさされたジルは
慌てて後ろに引き返そうとしたが
背後から右腕を掴まれ、体勢を崩した。
「きゃあっ」
「あんまり疲れさせんなよなー。
おい、ルイス!!やばいってなんだ!」
「き…騎士団だ!
大陸最強と呼ばれる、騎士の最高峰…
イェルディ王立騎士団が査定とか言って
乗り込んできやがる…!」
(イェルディ王立騎士団?!)
ジルは腕を掴まれた不自由な体勢のまま
視線を巡らせた。
