「そう。俺はアンタを買った。
叔母様とやらから、な。
なんせ、東方大陸にはアンタみたいな
金髪の女なんて居ないんだ。
献上すれば、俺は大陸一の商人になれる。」
「叔母様が、私を売った…?」
呆然とジルは呟いた。
「そんなわけない」と否定できないのは
日頃の叔母の態度が物語っている。
昨夜―――お祝いだと言って
料理人を呼び、豪華な料理が食卓を彩った。
どこからこのお金は出たんだ、
とは聞けずにいたが
なるほど自分を売って手に入ったお金だとしたら頷ける。
お祝いのぶどう酒を飲んだ直後に
意識がなくなって――――。
『明日は私もレティもいないから』…
というあの言葉は
叔母とレティが出掛けるのでなく
ジルがいなくなる、ということだったのか。
「哀れなもんだな。
あの叔母様とやらの娘…アンタの従妹の
結婚資金にするために、
そこまでするとはある意味尊敬するよな。」
ジルは歯を食いしばった。
悔しかった。
叔母の為、従妹の為、
精一杯やってきたつもりだったのに…!
面白そうに眺めるラーズの隙をついて
胸板を思いきり押し返す。
「ぅおっ?!」
予想外の行動に驚いたのか、ラーズは
ひっくり返った。
