あなたは私の王子様。―Princess Juliet―


「え…?なんでって―――」

ここクレゼンダールはイェルディの誇る
貿易港だ。
東方大陸からの貿易船は月に一度
不思議な薫りのする緑色のお茶や
珍しい色合いの織物や甘い果物などを
運んでくる。

ここ何年か皇帝が失政を続けていたせいで
途絶えていた貿易船の運航を
再統治をした皇帝が再び認可したのだと言う。

「じゃあ、質問を変えてやろう。
貿易船は物を運ぶだけじゃないだろう。」

ジルはすぐに理解した。

「物以外を運ぶ…って、人間ってこと…?」

「そう、当たりだ。
この貿易船は人間も運んでる。
俺然り、アンタ然り、な。」

人間を運ぶ。私を、運ぶ。
つまり、その言葉が表すのは―――。
ジルはひとつの答えを導きだした。
だが、それを認めるのは…

「認めるのが怖いか。」

「…な…」

心を読まれたのかと思った。
ラーズはジルの瞳を覗きこんで
ふ、と笑った。