「うん。及第点だな。」
(なにが?!)
一人ごちて、にやにやとしているラーズは
面白い玩具を見つけた時のように
目を細めている。
「なぁ…アンタ名前は?」
「そ、そんなの教えるわけないでしょう!」
強がってみたものの、
どうなるか分からない恐怖が足元から
せりあがってくるようで
ジルは崩れ落ちそうになる足に力を入れた。
「ふぅん…ま、いーけどさ。
もうすぐ出港する予定だから、
その前に―――」
「?!」
瞬きすると同時にラーズの顔が
目の前に迫り、鈍い痛みとともに
床に押し倒された。
「――俺が味見をしてやるよ。
どうせ、俺のものなんだからな。」
「はい?」
なに言ってるのこの人、と
ジルは思わず状況を忘れて首を傾げた。
俺のもの?
覆い被さるラーズは
一瞬、哀れむ目をしてみせた。
「アンタなんで貿易船にいるか知ってるか?」
