しゃっ、とカーテンを開き
その眩しさに目を細める。

青々と光り輝く海面、眩いばかりの陽光、
活気溢れる人々の声――……。

ジルは愕然と、その場に座り込んだ。

「ここ…もしかして――」

「クレゼンダールだよ。」

がちゃ、と開いた扉の先に
黒髪の男が立っていた。
頭には鮮やかな頭巾を巻き、
鋭い眼光を放つ瞳は――漆黒。
扉に寄っ掛かるように立つ男は
まるで物語にでてくるような
出で立ちをしている。

思わず後ずさったジルは、柱にしがみついて
立ち上がった。

「……あなた、東方人?」


「そうさ。よく分かったなお嬢ちゃん。
俺はこの貿易船の船長ラーズだ。
以後、よろしくな。」

男――ラーズは
どっかと椅子に腰をおろすと
にやにやとジルを上から下まで
吟味するかのように見やった。
その視線に、ジルは
ぎゅっと身をすくませた。

(なに…この人…!)