がしゃん、と何かが割れる音がして
ジルははっ、と目を覚ました。
「――――夢…」
いつもそうだ。
両親と過ごした日々を夢に見ると
涙が頬を伝っている。
「久々にお父様とお母様の夢を見たな…」
懐かしくて、暖かくて、幸せで、
けれど切なくて……
ずっと見ていたくなる夢だった。
ジルは「う~~ん」と伸びをすると
分厚いカーテンに手をかけた。
そして、違和感に気付く。
「あら…この柄、私の部屋の
カーテンじゃない…。」
分厚い空色のカーテンなんて
あっただろうか?
よく部屋を見渡してみると、
調度品や壁色まで違う。
寝起きでぼんやりしていた頭が
徐々にはっきりし、警鐘を鳴らす。
「―――違う…ここは、城館じゃないわ…!」
内陸にある王都では有り得ない潮臭さと
騒がしいほどの喧騒―――。
まさか、という思いと
もしや、という思いが交差する。
