呼ぶ声に気付いて、顔をあげると
暖かいオレンジ色の光が
ジルを照らしていた。
ゆらり、と影が揺れる。

薄い金色の髪をした父親が
困った顔をしてジルを見ていた。

「ただいま、ジル。
どうしたんだい?こんな暗いのに…。
暖炉の火は?」

「おとうさま…!」

薄い灰色の瞳をした父…キースは
びっくりして固まっているジルを抱き上げた。

「おや、泣いていたの?」

「…だって…
おとうさまもおかあさまも…」

拗ねた横顔のジルに、キースは
ちゅっと何度も口づけをした。
それが何だかくすぐったくて、
いつの間にかジルは笑っていた。

「くすぐったいよぅ、おとうさま」

きゃはは、と笑うジルを
抱き上げながらくるくると回すキースのそばに
メイド達を呼びに行っていた母…
クラウディアが微笑を浮かべながら
寄ってきた。

「あらあら、楽しそうね。
お母様も混ぜてちょうだい?」

楽しそうに笑うキースとクラウディアと
3人で過ごした誕生日の夜は
ジルの大切な思い出となった。
その翌日。
両親は不慮の事故で命を落とし、
ジルは家族を失った。