「大丈夫。手のひらだし。
突き指なんかじゃないから。
ちょっとヒリヒリするけど、すぐ治る。」
「ホントに、ごめんね…」
「ううん。萌先輩に怪我がなくてよかった」
うぅ…、なんていい子なの…っ
そして、綾斗くんは、一人の男の子に近付いていって。
「サトシ!てめぇ方向音痴なんだから
他の部活がある時はロングパスの練習やめろっつったろ!」
怒鳴りつけていた。
「悪い綾斗~!
あ、でも綾斗、今の“ハンド”だぞ!」
「それどころじゃねぇよバカ!
萌先輩に謝れ!」
「えっ…萌先輩だったんすか!?
す、すみません!!」
綾斗くんと同じサッカー部の1年生で、
さっきのボールを放った張本人と思われる男の子が、あたしの前に来てバッと勢いよく頭を下げた。
「いや、あの、顔上げて?」
「ホントにごめんなさい!!
綾斗がいなかったら、俺はその可愛い顔を壊してしまうところでした!!
本っ当にごめんなさい!」



