―君との恋愛―
あたしは昨日のことから付き合うことになったんだ。初めての恋愛、初めての彼氏。
あたしの初めての彼氏は明るくて笑顔が可愛らしくて誰よりもあたしのことを
わかってくれてる人。本当に信頼してる人だった。だから幸せだったんだ。初めて
幸せってものを感じた。幸せを知ったんだ。これも全部幸輔のおかげで…。
それからあたしと幸輔の付き合ったっていう噂は一気に広がり次の日には2人で
廊下を歩くだけで注目を浴びていた。『ラブラブ~』『羨ましい』って声も
多ければあたしの悪口も聞こえてきた。すると幸輔が耳元に顔を近づけていった。
『あんなこと言われても気にすんな!俺が守るからな』って言ってくれた。
その言葉であたしは結構心が軽くなり、楽になった。その日の幸輔とあたしは
4時限目まで普通に授業を受けてお昼からサボることになっていた。席が隣の
あたしと幸輔。だけど幸輔は1時限目から4時限目までずっと寝ていた。
―キーンコーンカーンコン―
その音と共にみんなの気が抜けた声があちこちから聞こえる。あたしはお弁当を
持って屋上へ向かおうとした。幸輔はずっと寝てるから起こしちゃ悪いと思って
黙って向かった。1人でご飯を食べてるとギィと扉を開ける音が聞こえた。
幸輔だと思い、振り向く。だけど、そこに立っていたのは雄一だった。昨日
あたしにキスをした田中雄一。そして雄一とあたしには長い沈黙。そして
「…なに?幸輔なら教室…」
「お前に用があんだよ」
「…じゃなに」
「昨日、ごめんな」
「…」
「幸輔がお前のこと好きって俺ずっと知ってたんだ。だけど、俺はお前の事が
ずっと好きだったから…幸輔のとこに行ってほしくなかったんだ。だけど、俺
最低だよな。好きな女の嫌がることして…俺、お前も幸輔の事好きってこと
気が付いてたよ。だから俺はお前と仲がいい子のことを好きになろうとした。
…本当、ごめんな…」
…そうだったんだ。だけど、雄一はあたしの大切な友達の好きな人。だから
もうあたしは雄一のことを許した。だってもう過ぎたことだもん。
「うん、大丈夫だよ」
「ありがとう」
「雄一、ごめんな」
…幸輔の声。起きて屋上に来たんだ。そして雄一と幸輔は仲直りしたみたい。
雄一はあたしと幸輔の邪魔になるからと言って屋上を出た。すると、幸輔が
いきなり真剣な表情で聞いてきた。
「お前は俺のこと好きか?」
「なに、いきなり!?気持ち悪い(笑)」
「…俺はお前の事好きだよ、ずっと一緒にいたい。実は4時限目終わってお前が
黙って屋上に向かってる時、俺起きてたんだ。俺も向かおうと思ってたら雄一が
お前を追って屋上に向かったからついてきて、話を聞いてたんだ。すげぇ辛かった。
もしかしたら愛香は雄一の方に行くんじゃないかって…不安だったんだ」
「…ばかっ!あたしは幸輔が好きだもん、誰になんと言われようと…。あたしだって
ずっと一緒にいたいもん…ごめんね?」
「愛香…愛してる」
「うん」
そう言って幸輔はあたしのことを抱きしめた。幸輔の温かい体温。甘い香りの香水。
幸輔の小刻みに動いてる鼓動。全て全てが愛しかった。幸輔の全てが。
そしてあたしと幸輔は唇を重ねた。温かい感触。お互いの顔に着いちゃいそうな
くらい近い距離。…幸せだった。幸せって本当にみんなに来るんだね。
幸輔と出逢えてあたしは本当に幸せだよ。出逢えてよかった。ずっと一緒に
いようね?あたしは幸せすぎて涙が頬を流れた。それを見て幸輔は笑ってあたしの
涙を拭いた。本当に幸輔と一緒にいられるのがずっと続く、そう思ってた。
本当に幸せだからかな?そしてあたしと幸輔はその日笑って指切りをした。
『ずっと一緒にいよう』
ただの子供の約束って思うかもしれないね。だけど、あたしと幸輔にとっては
かけがえのない大きな約束。少しでも離れたくなかった。あたしは幸輔と出逢えて
幸せ。だけど、結構我が儘になってしまったのかもしれないね。人と人との出逢い
ってこんなにも人を変えてしまうんだね。なんか不思議だね。だけど、あたしは
幸輔と神様に感謝している。出逢ってくれてありがとう、出逢わせてくれて
ありがとう。幸せをありがとうってね。そして指切りをした後あたしは教室へ
戻ろうと立ち上がる。すると幸輔が笑ってあたしの頬にキスをした。
甘い甘いキス。そしてあたしと幸輔は手を繋いで屋上を出た。この日、あたしと
君の絆が少し深まった、そう思いました。
