―優しさの意味―
『やっぱり、笑ってるお前が可愛いよ』
…誰?あたし達は声のする方を2人で目を合わせパチクリさせながら
振り向いた。そこにいたのは、遠藤幸輔と…そいつの友達の…
田中雄一。田中雄一とは遠藤と同じくらいクラスで人気がある男子で
明るい金髪に制服は着崩している。そして黒淵のメガネ。普通の人が
こういうメガネをしたら真面目そうに見えるのにこの人がメガネをかけると
すごくチャラく見える。やっぱり、クラスで人気があるだけあって顔は
整っている。すると、その2人はあたし達の前に座って
「俺は、もう有名だから知ってるよな?遠藤幸輔だよ~♪愛香ちゃん、この前は
どうもねっ!笑わせてもらいました~」
そうふざけて言う遠藤。この前というのは授業中の、虫事件。別に笑わせようと
思ってあんなことしたわけじゃないのに…そして
「僕は…田中雄一」
すると、優奈は不思議そうに明るく聞いた。
「どうして僕なの?」
すると、聞いてもない遠藤が答えた。
「こいつ、極度の人見知りだから、馴れるまでずっと僕なんだよ~!
俺も最初は僕で結構馴れるまで大変だった~まぁそういうことっ!」
なんか不思議な人だなぁ。それが田中に対するあたしの第一印象。遠藤に対する
第一印象は苦手な人。そしてあたし達の軽い自己紹介もした。あたしは普通に
名前と好きなこととか。優奈は明るく色々なことを話した。そしてあたしは
パッと田中の顔を見ると、田中は優奈のことを見て顔を赤くしていた。
そして優奈の長い自己紹介が終わると、下を見て携帯をいじりはじめた。
…ん?もしかして田中は。すると、5時限目が始まるチャイムが鳴り、あたしは
立ち上がると、優奈があたしの制服をつかみ
「サボっちゃお♪」
とその可愛い笑顔で言った。遠藤も続いて「そーだ、そーだ」と言っている。
…ガキ。あたしは浅いため息をついてまた座った。結局授業はサボることになり、
それからあたし達4人のおしゃべりが始まった。と、言っても田中はずっと携帯を
いじってたけど…あたしと遠藤が話してる時、ふいに優奈を見た。すると、優奈は
赤い顔をして携帯をいじってる田中のことを見ていた。見られていることに田中は
気が付いてないみたいだった。すると、遠藤がいきなり立ち上がって
「俺、トイレ!ちょっとお前も来い!」
そう言って遠藤はあたしの腕を引っ張り、屋上を出た。
「ちょっと、なんであたしがあんたのトイレ行かなきゃいけないの?」
「お前はちょっと空気読めよ~(笑)」
「あーそういうことね!♪あの2人いい感じだよね~!」
「そういうこと♪だから俺たちはこのまま違うところでサボろーぜ♪」
そう言って向かった先は学校の図書室。あたしの学校の図書室は利用者が少ない
わりに中は凄く広いため、見られないような角度の場所もある。だからあたしたちは
勘違いされないように、見られない角度の場所に行き、ずっといた。本を見たり。
あたし達は2人になると無言になり、ずっと何時間も無言でいた。すると、あたしは
いつの間にか机に伏せて寝てしまっていたようで…。すると、目の前には遠藤が
寝ていた。あたしは起こさないようにそーっと起き上る。そして遠藤を見る。
…へぇ、こいつまつ毛長いんだ。鼻もすらっと高くて…黙ってたらカッコいい。
すると、遠藤はいきなり目を開け、ニコッとして
「へぇ、俺に見とれてんだ?」
「ばっ、そんなわけないじゃん」
「へぇ?」
なにこいつ。昼間のキャラと全然違うじゃん。昼間はみんなに好かれるような
明るいキャラで、いきなりなんか上から目線。あたしは遠藤にそう言われた時
自分の顔が赤くなっているのがわかった。すると、遠藤は
「なになに~?愛香、赤くなってる」
「ばか、そんなわけ…」
すると、遠藤はあたしに顔を近づける。…え?なに?…キ、キス?!
だけど、当たったのはあいつのオデコとあたしのオデコ。
「ん~?熱はない、顔が赤いから熱があるんだと思った」
「な、ないよっ!」
「ん?もしかして、期待した?」
「し、してない!!」
すると、遠藤はニヤニヤしてあたしのことをずっと見ている。あたしは恥ずかしく
なってバッグを持ち、図書室を出た。…なんで、こんなに心臓の音が聞こえるの?
…なんであんな奴にドキドキしてるの?苦手なのに。あーモヤモヤする。
あたしはどうしちゃったんだろう…?そしてあたしは走って誰もいない家へ帰った。
誰もいないって言っても猫はいるけど…。ミルク。それがあたしの猫の名前。
寂しくてもミルクがいる。ミルクといると安心するから…。あたしはその日の夜
気が付けば無意識のうちにため息をついていた。すると、いつもは鳴らない携帯の
音が部屋に響いた。あたしのアドレスを教えたのは優奈だけ。どうしたんだろう?
携帯を開くと、メールだった。送信相手を見ると優奈じゃない。"遠藤幸輔"の名前が
ハッキリ出ていた。…どうしてあいつはあたしのアドレス知ってるの?
メールの内容は一言だけ。
『夕方図書室の時の俺の性格、誰にも言うな』
ただそれだけだった。あー、みんなの前の性格は明るくてチャラ男って感じだけど
今日の夕方のあいつの性格は正反対で俺様系って感じだった。
誰にも言うなってことは、あたししか知らないのかな?なんか…嬉しいかも。
ってそうじゃない。あたしはそっちじゃなくてどうしてあいつがあたしの
アドレスを知ってるかだよ。あたしは慣れないメールで
『どうしてアドレス知ってるの?』
と送った。すると、1分以内に返信が来た。
『お前が寝てる間に入れておいた』
…は?なんでよ。入れる意味わかりたい。だけど、初めてのメールが遠藤で嬉しい
って思う自分がどこかにいた…。
―次の日―
あたしは学校に着き、いつもどうり優奈と話していた。すると、優奈が赤い顔して
「うちね…雄一君のことが好きみたい」
そう言われた。…うん、もう知ってるよ。そう言いたかった。だけどあたしは
「そうなの?!ビックリ~♪頑張ってね!」
そう言った。…ということは、優奈は田中が好き、田中のところへ行く、遠藤がいる。
そう考えたとき、あたしの心臓の音は昨日みたいに大きくなった。…なんで遠藤って
いうのでこんなにもドキドキするの?すると、優奈が
「愛香は遠藤君のこと好きでしょ?♪」
「は?好きじゃないよっ!」
優奈はドヤ顔で"ふ~ん"と言っている。…違うってば…。…痛い。傷口が痛い。
もう塞がってる手首のリストカットの傷。…痛い、痛い。
優奈はその日早退した。熱が出たらしい。…田中のこと考えすぎだよ~♪
だからあたしは1時限目から傷が痛くて授業に出られず屋上に寝転んでいた。
…傷が痛い。そう思いながら傷を抑える。その日は暖かくポカポカしていた。
そのせいか、あたしはそのまま寝てしまっていた…。
『あんたなんて産まなきゃよかった。邪魔。あたしの前から消えて』
…ねぇどうして?あたしは必要じゃないの?いらない子なの?死にたいよ。
そしてあたしはカッターも持ち、腕を思い切り切っている。
…なにこれ?夢?現実?『あんたなんて産まなきゃよかった』その言葉がずっと
流れている…。なにこれ…誰か…誰か…助けて…。
「……か、…いか、…あいか、愛香っ!」
そう言われ目を開けた。目の前には…遠藤。すると、遠藤はあたしのことを
心配そうにぎゅっと抱きしめた。…なに?なんでこいつがいるの?
「…どうしたんだよ?」
「…ッグズ」
…涙が止まらなかった。人のぬくもり。…遠藤なら信じられる。なぜだかわからない
けど、そう思った。あたしは鼻声で少しずつ話した。両親のこと。…レイプの事。
リストカットのこと。傷を抑えて、涙もこらえて話した。すると、遠藤はあたしの
頭をポンポンと撫でた。「辛かったな」その言葉と一緒に。
…優しいね。なぜだかわからないけど、その優しさは優奈とは違った。
何が違うのかなんてわからない。けど、なんか違った。遠藤はその優しい大きな手で
あたしが泣きやむまでずっと頭を撫でで、ずっと傍にいてくれた…
