唇に当たった柔らかいものは、女の唇。



ドアを開けたのは…懍。







懍の姿が俺の目に映った。



懍が勢いよく資料室から出ていった。





俺は慌てて目の前の女を突き飛ばして、懍の後を追った。





名前を呼びながら走った。





着いたのは懍のクラス。





ドアを開けると、懍は友達に寄り添われて…泣いてた。





『…懍。ちょっと来て』



そう言うと、懍は首を大きく横に振った。








嫌か……。









『……ごめん』





口から出たのはその一言。








俺は自分のクラスに戻って、机に伏せた。









懍を泣かせてしまった…



その事実が、俺から全てにおいてのやる気を奪った。








やっぱり俺はバカで……


何であの時、懍が泣いたのかなんて全く分からなかった。





*