蒼は今頃きっと心配してアタシを探してるに違いない‥なのにこの男はアタシの事も考えずにスタスタ歩いてるし‥


そんな事を考えていると前を歩いている令が腹立だしく思えてくる。

「もーアタシ疲れた!一体どこまで歩かせんのよ!1人で行けばいいじゃん!」

莉奈はその場に座り込み、令はその時初めて莉奈の方を振り返った。

あの店の男のように首を絞められるかもしれない、そんな覚悟で吐き捨てた莉奈に、令は意外な言葉を返してきた。

「悪い、少し考えて事してた‥少し休もうか」

そんな令の言葉に調子が狂う。
考え事をしていたのなら莉奈が逃げ出してもわからなかったのではないか‥この令という男が莉奈はますます分からなくなった。
令が木陰に腰掛け、莉奈もそのすぐ隣に腰掛ける。

「‥あんたさー!何者なんだ?」

令は力を見せ付けた時とは違い、莉奈に友達のように話しかけた。
先程令に感じた恐怖感が嘘のようになくなった。

「何者って言われても‥それにワタシはあんたじゃない、莉奈なんだから!」

「莉奈‥」

少しきつく言うと、令は名前を復唱した。

その姿が莉奈には怖いとは程遠く、逆に子供に見える。
それでなくとも令は蒼の大人びた顔立ちとは違い童顔なのに。