「あんたに恨みはないけど‥とりあえず俺の所にいてもらうから」

令は莉奈の腕を掴んだ。

「ちょっ‥ヤだよ!アタシ蒼を待ってるんだから!」

振り払おうと必死になったが、令は掴んだ手を放してくれない。

「それなら余計おもしろい‥」

令はそう言うと、莉奈の腕を自分の方に引き寄せた。
令の顔が莉奈のすぐ近くに迫り、莉奈は怖くなり目を閉じる。

「待ってるはずのあんたがいない‥。あいつ、どうするんだろうな」

莉奈の耳元でそう呟く令。
莉奈は怖くなり、自分の出せる最大限の力で令を振り払った。

「やめてってば!」

何とか令の手を解けたが息があがる。
先程まで手に持って見ていた指輪が地面に転げていく。

「お客さん困るね。商品に傷でも付けたら弁償してもらうよ」

莉奈と令のやり取りを見て、中から店の男が出てきた。
男は坊主で令の二倍はありそうな体つきをしている。

「ゴ‥ゴメンなさい!」

その男の風格だけで誰もが謝ってしまうだろう。
莉奈は謝り指輪を拾おうと地面に屈んだ。
傷が付いていないかを確認していると、店の男が震えたような声で叫びだした。

「や‥やめてくれ!」

突然の叫び声に驚き、振り返り男を見た。

「俺は今この女と話しているんだ」