君がくれたモノ

しかし蒼もその時ばかりは莉奈を気にしてくれた。

「いえ‥会いたいんですが私はこの剣を修理に出しに行かなきゃ行けなくて」

笑顔でそう断り、莉奈の方を見た。

「そんな‥」

いかにも残念そうな茜を見ると、少し莉奈は可哀相な気持ちになる。

「剣の修理が終わったらすぐ戻るから、好きな着物を着ておいで」

蒼は小さな声で莉奈にそう話した。
蒼が来てくれないと知った莉奈は、一気に気持ちが重たくなる。
今から茜と二人になってしまうのだから‥

「では莉奈をお願いしますね。またすぐに迎えに来るので」

そう言って蒼は行ってしまった。
茜は蒼の背中を見つめたまま切ない顔をしている。


気まずい‥どうすんのこの空気!


莉奈はそんな事を考えていた。

「莉奈さん‥だったわよね?」

突然呼びかけられた莉奈は、まるでかくれんぼで鬼に見つかった子供の様に、体が凍り付く感覚を覚えた。

「店‥すぐそこなんで、お好きな着物お選びになって」

先程のハキハキした声とは違って、魂の抜けたような声で莉奈に言い、すぐ前にある着物屋へと入って行った。

中は外から見るよりも広く、莉奈の想像する日本の着物とは全く違い、この世界の人達が着ている袴に似た形の色鮮やかな物が並んでいる。

「すごい‥綺麗‥」

思わず莉奈が声に出して言ってしまうほど見事な物ばかりだ。