君がくれたモノ

「大切な人‥?この方は蒼様の恋人でいらっしゃるの?」

表情が先程とは明らかに変わった茜は、莉奈を見ながら蒼に聞いた。

【大切な人】という意味を莉奈も聞きたい。
蒼がどう答えるのか‥なぜか莉奈は期待のようなものを持ってしまう。

「恋人‥だったらいいんですが。彼女は私の心の隙間を埋めてくれたんです」

笑顔で茜に蒼は言った。
茜はいかにも面白くなさそうだ。
そんな茜の表情にも気付かず話しを続ける蒼の後ろで、莉奈は気まずい思いをしていた。

「それより茜さん。莉奈に着物を見立ててもらえませんか?今日町に来たのはその為なので」

茜はこの淋江の町の着物屋の娘だ。
亡くなった王が昔からこの店をひいきにしており、王はいつもこの店の店主である茜の父親に、着物を見立ててもらっていた。
そろ頃から蒼は茜を知っており、また茜の父親も蒼を気に入っている。

「それは構いませんが‥蒼様もせっかく来て下さったんだし父に会って行ってほしいわ。」

茜は莉奈を二の次と言わんばかりに蒼の腕を掴んだ。