「ごめん‥アタシ疲れたからちょっと休みたいんだけど‥」

莉奈の声を聞いて、蒼は抱きしめた腕を緩めた。

「きっと疲れているんだ。部屋まで案内するよ」

蒼は莉奈を連れて屋敷の中へと入った。
先が見えない程長い廊下、洋風で美しく光った朱い柱。莉奈はここがどこなのか不思議でならなかった。

その長い廊下を通って、蒼は一枚の襖の前で立ち止まった。
襖を開けると、木で出来た扉が出てきた。

「ここが今日から莉奈の部屋だよ。
俺の部屋から一番近いから、何かあったらすぐにおいで」

そう言って蒼は、莉奈の部屋の隣にある大きな襖を開けて入って行った。

目の前の扉を開けると、そこは小さく綺麗な部屋だった。
ベッドとタンスが置いてある。夕日が差し込み暖かかった。

そういえば今は11月だって前に蒼が言ってたっけ‥

そんな事を思い出しながら、莉奈はすぐにベッドに寝転ぶ。

「アタシ‥これからどうなるんだろ。」

ここにいる、と決めたものの‥莉奈は不安で押し潰されそうだった。


蒼がこの国の王だったなんて‥。
それにしてもさっきの桜の声、どこから聞こえてきたんだろう。


色々な事が急に起こりすぎ、莉奈は疲れきっていた。
少しの間眠ろうと目を閉じた。