「なーんてね。」

そう言おうと思ったのに。

何で声が出ないの?

あれ、私……カズに抱き締められてる。


「………木下。俺も好き。」

え?

カズが私を好き?

「木下…由宇って呼んでいい?」

そう言いながら、カズは私の体を離した。

ゆっくり顔をあげてカズを見る。

嬉しそうなカズの顔を見たら「ごめん、嘘」なんて言えない。

でも好きじゃないのに、カズと付き合うなんて…それこそ失礼じゃない?

……でも。


「いいよ。カズ。」

ごめんね、嘘ついて。

そんな笑顔で私のこと見ないで。


「由宇。よろしくな。」

そう言ってカズはもう1度私を抱き締めた。