完:嘘つきは恋の始まり


中を回って見てみる。

それでも綾の姿は見当たらない。



「………由宇?」


え?

後ろから聞こえた声。

待ってよ。

何でここにいるの…………?


「………カズ。」

振り向けば、神妙な顔付きで私の方を見ているカズ。

正面から、こんなにしっかりとカズを見るのはいつぶりだろう。



この時間がなんだかリアルに感じなくて、ぼーっとしているとカズが私の手を取って歩き始めた。

「っちょ…っと!カズ。私用事あるの!」

繋がれた手が熱い。

でも私は綾と待ち合わせてるのに。