完:嘘つきは恋の始まり


「おはよう、由宇。」

学校に着くと綾がいつもの笑顔で話しかけてきた。

「おはよう…綾、あのさ。」

「まあ、いいからさ。とりあえず教室行かなきゃ遅刻しちゃうよ!」


そう言って教室まで私を引っ張って行く。

ちょっと…心の準備ができてないよー…


教室の扉の前に着くと綾は立ち止まって

「あとで話は聞くからね。」

と優しい笑顔を向けてくれた。


「とにかく入ろうね。」

「…うん。」


教室に入るといつもと変わらないザワザワした空気。

その中で私の意識はただ1人に。


「カズ……」

思わず溢れでた私の小さな呟きに、カズはチラっとこっちを見たけれど、すぐに顔を反らしてしまった。