バイト先のカラオケ店に着くと店長の藤田さんが
慌てていたのが目に入った
「どうしたんですか?」
藤田さんに駆け寄ると
藤田さんは待ってました!と言わんばかりの顔で
こちらを向いた
「あ~!松本さん!!
待ってたよ~!!」
はい。
顔でわかります。
「何かあったんですか?」
基本のほほんとした雰囲気の
藤田さんがここまで慌てるなんて珍しい
「それがね~大変なのよ!!」
…いまいち話が噛み合ってない
「ですから、どう大変なんですか?」
「えっとね、えっとね、
今日お客さんがいっぱい入って
それでね、
外国人のかたがいて、
うんとね、
何言ってるのかわからなくてね、」
すいません。
何言ってるのかわからないのは藤田さんです。
てか、いい年こいて
しかもお店経営してるくせに
どんだけ説明へたなのよ…
「とにかく何言ってるのか
わからないの!!」
「はぁ…」
いまいち状況がつかめないまま
「とりあえず着替えてきて!」
という藤田さんの命令で
更衣室にきています
「藤田さん、着替えましたよ?」
バイトの制服に着替えて
更衣室から出ると
扉の前で待っていたのか
うろうろしてる
「あぁ!!やっときた!
ちょっときて!!」
そんなに時間かかってないでしょ
と思いながらも黙ってついていく
てか、外人のお客が来たくらいで
何を慌てているんだろう?
「ほら、松本さん
外人さんがいるでしょう?」
「はい、確かにいますね」
だから?
「何かを囲んでるみたいに
集まってるでしょ?」
「…そう、ですね?」
まぁ、そう見えなくもないが
そんなはっきりとはわからん
「あの中にね、山野さんがいるの」
山野とはあたしらと同じ年で
ここでバイトをしている
山野 稜雅(ヤマノ リョウガ)のことだ
「はぁ…?」
だからなんだと言うのだろう?
「山野さんね、英語全然できないのに
あそこで30分以上もがんばってるの」
「…は?」
「だから松本さん!!
山野さんを助けてあげて!!」
「え…」
「じゃあいってらっしゃい!!」
ドンッ
状況がわからないままに
外人さんたちの中に入れられると
確かに稜雅くんがいた
「ま、松本~(泣)」
「…(汗)」
それから外人さんとは
まぁまぁ英語の出来るあたしが
話をつけなんとか稜雅くん救出に成功した
「あぁ、山野さん!
無事でよかった~」
「ありがとう~松本~」
「…てか何で英語できないのに
あそこにいたの?」
外人さんが聞いてきたのは
トイレはどこかということ
少し空気が悪かったのは
トイレをしたいのに
全然話が通じなかったから
「あんな中学レベルの英語もわかんないのに
何で稜雅くんが対応しようと思ったわけ?」
「う…
だって藤田さんが
『山野くん、いってらっしゃい』
って言ったから」
その言葉を聞いてギロッと藤田さんを見ると
いつもののほほんとした藤田さんに
戻っていた
「あれ?そうだっけ?
あはは、ごめんね~」
この緩さ…
激しく実栗を思い出すよ
「じゃあ解決したことだし
松本さんはレジはいってくれる?」
「…はい」
「山野くんは少し休んでいいよ」
「うす」
あれ?
何であたしは休ませてくれないの?
なんて疑問をもったが
稜雅くんと休むのも
なんか疲れそうなのでほおっておいた
レジに入ってみると
藤田さんがお客がいっぱいと言った事が
本当だったとわかった
新学期だからか
学生の客がたくさん入ってくる
「羽音~」
ざわざわと騒がしい学生たちの中から
間延びのした声が聞こえてきた
「実栗…」
「約束どおりきたよ~」
「別に約束は…」
「あ、紹介するね~」
おい、人の話は
最後まで聞けよ。
「忍~、
あれ忍は~?」
「知らないよ」
あたしが知るわけないでしょ
「もう、どこ行っちゃったんだろ~?」
「探してきたら?」
「う~ん…
あ、いた!!
忍~!」
羞恥心を知らない実栗は
大声で忍を呼んだ
実栗が大声出したせいで
なんかあたしまで見られてるんですけど…
そんな中、人ごみを裂いて出てきたのは
どこかで見たことあるような男の子
「もう、忍~
どこ行ってたの!?」
「あほか!
実栗が勝手にいなくなったんだろっ!?」
「え~?
そうだっけ~?
ごめんね~?」
「…ったく」
…やっぱり藤田さんと似てる
「これがあたしの彼氏の
宮崎 忍(ミヤザキ シノブ)で~す」
少し照れたように言う実栗は
こういうときはかわいいと思う
普段はうるさいやつだけど…
「はじめまして」
「あ、どうも」
なんか爽やかそうだな…
でも、まじで
どこかで見たような、ないような…?
「じゃあね、羽音」
「…え?
歌いに来たんじゃないの?」
「違うよ~
あたしたちこれから
映画見に行くんだもん」
「じゃあ何しに来たわけ?」
「羽音に自慢しに」
あ、そう
やっぱ実栗の考えてることは
わかんないな~
「じゃあね」
「さようなら」
ホントに去って行った
カップルを見送って
バイトに集中した
「松本さ~ん
もうあがっていいよ~」
気がつくともう8時を回ろうとしていた
「お疲れさまでした~」
誰にも聞こえてないだろうが一応言う
外に出るともう真っ暗だった
あ、星が見える
明日からは普通に授業あるし
早く帰って寝よう。
うん、そうしよう。
