「ご、ごめんなさい。遼さんは運転してるのに、、ずっと隣で寝てるなんて申し訳なくって……」

「そんなこと気にしてたの? 俺は梓の寝息聞いてて、幸せな気分だったけど?」

「幸せ?」

「そう。だって、それだけ俺に気を許してるってことじゃない? まぁ運転中だから襲うことはできないけどさ」

「襲うって……」

その言葉を聞いて、さっきの唇の感触を思い出す。
あれって、もしや……。

「遼さん? もしかして私に、キ、キスした?」

「うん、した」

即答するんだっ!
それも、何のワルぶりもせず……。

「だって梓、可愛い顔して寝てるからさ。それに寝言で『キスして』って何回も言ってたし……」

「それ、絶対に言ってないよね?」

「う~ん、俺には聞こえた」

そう言う顔は、明らかに笑ってる。
ムッと唇を尖らせ怒ってみせると、人差し指を私の唇に当てた。

「梓の唇って、潤ってて柔らかい。病みつきになりそう」

艶っぽく囁く言葉に、思考を乱される。
顔を近づけてくる遼さんに「こんなとこじゃダメ」と言いたいのに、それさえも言わせてはもらえない。
唇に当ててる指をゆっくりと動かし首筋を撫でると、全身に電流が走り目を開けていられなくなってしまった。

「可愛い」

今日何回も聞いた言葉。
「可愛くないっ」って反論していたことも、今はどうでもいい……。
指がなくなり寂しくなった唇が、ある一つのものだけを欲していた。

……遼さんの唇……