「ありがとうのキス。どうしても今したかったから……。でも棚橋さんに怒られちゃうかなぁ。グロス、取れちゃってる?」
唇を尖らせて見せると、今度は大きな溜め息した。
「だから……。今俺を煽ってどうするんだよ? ここで押し倒されたいわけ?」
「そ、そんなつもりはないけど……」
「けど?」
「押し倒してみる?」
「はぁっ!? 出来るわけ無いだろっ!!」
笑いながら、額を指でピシっと小突く。そしてゆっくり抱きしめられると、耳元に顔を寄せた。
「ここでは無理だけど、家に帰ったら押し倒す。覚悟しとけよ」
「覚悟しとけよって……」
いつも押し倒してるじゃない……って、ここで言うのは止めておこう。
それにしても今日の遼さんは、朝からテンションが高く時々人格まで変わってしまうから困ってしまう。
でも───
「遼さん、格好いい」
元々背も高く何を着ても似合う遼さんだけれど、白のロングタキシードをバシッと着こなしている遼さんは、いつにも増して素敵だ。
「梓の横に並ぶのに、相応しい男になってるか?」
「もちろんっ!」
「じゃあ一世一代の晴れ舞台。いい思い出にしような」
「はい」
ちょうど時間になり部屋に戻ってきた棚橋さんに怒られメイクを直してもらうと、チャペルに向かって歩き出した。



