「組合の千さんたちが、梓さんいるなら一緒にってうるさいんだけど、どうする?」
雅哉くんが私の顔を覗きこんで聞いてきた。
これからの付き合いのことを考えると、ここは顔を出したほうが無難?
どうしようかと遼さんに首を傾げてお伺いを立てると、ニッコリ微笑んで手を差し出された。
「こんなに素敵な女性だからね。みんなに紹介したい」
雅哉くんがいる前でそんな恥ずかしい言葉を真面目な顔で言うもんだから、どういう顔をしていいか困ってしまう。
「はいはい、どうぞご勝手に」
ほら、雅哉くんが呆れ顔で店に戻っちゃったじゃない。
溜め息をつきながらも差し出された手に自分の手を添えれば、相変わらず王子様みたいに手の甲にキスを落とした。
「今日は営業日って言っても、常連さんとか知り合いばかり。もうお祭り騒ぎになっちゃってるよ」
「うん、知ってる。雅哉くんがメール送ってきてくれた」
「そうか……って、あいつとメールのやり取りしてるのか?」
「実家に帰ってからは、毎日遼さんのことを報告してくれてた」
「あいつ……」
顔をムスッとさせて「俺だってメールするの我慢してたのに」とブツブツ言うなんて……。子供みたいで笑ってしまう。
王子様みたいだったり子供みたいだったり。
遼さんのすることは予想がつかないけれど、いつでも私をドキドキワクワクさせてくれるから、全く飽きることがない。
「さぁ、そろそろ行こうよ。あまり皆さんを待たせたら、申し訳ないでしょ?」
「そうだな」
遼さんの指に自分の指をしっかりと絡めると、賑やかな声のする店内へと向かった。



