それに気づいた遼さんが、急いで近づいてきた。
「どうしたの、急に帰って来たりして。 実家で何かあった?」
「ううん、何もない。お母さんが変えれって。このまま実家にいたら、お父さんが私を何処かに隠すとか何とかって」
「何それ?」
「さあ……。って、私が帰って来たら迷惑?」
肩を落として、寂しさを装ってみる。
迷惑かどうかなんて、遼さんの顔を見れば一目瞭然。
私の顔を見てからというもの、心配そうな言葉を言ってる割にはその顔は満面の笑み。
近づいている距離は、今にも抱きしめられそうなくらい近かった。
なのに『迷惑?』なんて、私も大概意地悪だ。
「迷惑なんて思ってるはずないだろ」
遼さんも階段に座ると、ぎゅっと肩を抱き寄せた。
そして、私の耳元で小さく囁く。
「雅哉たちの手前、普通に振舞ってたけど、梓がいなくてかなり参ってた。俺から実家に帰れなんて言っといて、情けないな」
照れているのか肩口に顔を埋める遼さんが、愛おしくて仕方がない。
遼さんの背中にそっと両腕を回し、温かい身体を抱きしめた。
「両親には悪いけど、私も遼さんと一緒がいい。大好き……」
お互い身体を離し見つめ合うと、ゆっくりと顔を近づけた。
「遼さん、お取り込み中申し訳ないけど、お客が呼んでる」
「「わあぁっ!?」」
慌てて離れ上を見上げると、雅哉くんのニヤリと微笑む顔。
「もう、たった五日間でお互い寂しくなっちゃうなんて、どんだけラブラブなんだよ。いい年して」
「いい年は余計だっ!」
何て遼さんは言うけど、やっぱりちょっと浮かれすぎ?
でも、持ちが止まらないから仕方がない。



